エジプト王メンフィスと、王妃キャロルの第1王女であるヘンヘネトは、 イズミル王治世8年、ヒッタイト皇妃として嫁いできた。 彼女が14歳になったばかりの頃、ヒッタイトとの和議のあかしとして、突然話があがった。 母に似た快活な性格の娘を宿敵のイズミルは 身を小さくする"籠の中の鳥"に声を掛けた。 「目覚めたか。どうしたのだ? 気分がすぐれないのか? 申してみよ」 キャロルはイズミルに泣き顔を見られたくないとうつむき、黙ったまま両腕を抱えている。周囲から結婚を決められ、当然の様に娶った。まぁ結婚とは、女と共に暮すとはこんなことかと思っていた。 召使達から離れ、窓の外を眺めるキャロルの脳裏に王子の言葉が渦巻く。 キャロルを見つめて絡めとる茶色の瞳。 イズミル王子が帰還し
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